| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-076

街路樹を用いた地球温暖化対策

*籠谷優一,半場祐子(京都工繊大)

現在、地球温暖化やヒートアイランド現象の影響により都市の気温は上昇を続けており、早急に対策を考える必要がある。街路樹は都市に存在する植物であり、都市における自然景観の主要な構成要因となっている他、蒸散や日陰による都市気候の緩和、二酸化炭素の吸収と酸素の供給といったさまざまな機能・効用を持つ。

しかし、都市は自然生態系中の環境とは異なり、街路樹にとって厳しい環境といえる。そして、最大の問題は土壌の乾燥である。植物は十分な水が得られない場合、体内からの水の流出を防ぐために気孔を閉じる。このため、蒸散による水蒸気放出は行われず、二酸化炭素の取り込みができないので光合成も低下してしまう。これでは、都市に植物が存在しても、その機能を十分に活かすことができない。

本発表では、人為的な潅水や、街路樹の剪定時に出る葉や木片を利用して作ったマルチング材で土壌を覆うといった簡単な方法で土壌の乾燥を防ぎ、街路樹が本来持つ光合成能力・蒸散能力を維持することで、地球温暖化の抑止を目指している。

実験は、街路樹として日本でよく見かけるイチョウ、ソメイヨシノ、トウカエデの3種の苗木を用いて行った。これら苗木に潅水処理、腐葉土によるマルチング処理、粉砕した枝によるマルチング処理を施し、何もしないものとガス交換測定法を用いて光合成速度や蒸散速度を比較した。また、葉の乾燥ストレスの推定のために、炭素安定同位体比も測定した。

その結果、夏期に適切な潅水を行うことで、光合成速度や蒸散速度の上昇が見られ、秋まで維持することができた。マルチング材による処理では、潅水処理ほどではないが、光合成速度、蒸散速度の上昇が見られた。適切な管理を行うことで、街路樹の二酸化炭素吸収機能を大きく高める可能性があることが明らかになった。


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