| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-103

積分球を用いた様々なfunctional typeの植物種における個葉の分光特性の測定法

*野田響(筑波大・生命環境), 本岡毅(JAXA), 村上和隆(筑波大・生命環境), 奈佐原顕郎(筑波大・生命環境), 村岡裕由(岐阜大・流域圏セ)

個葉の分光特性(反射・透過スペクトル)は、色素含量や水分含量など葉の生理的機能を決定する形質や解剖学的構造を反映した植物生理生態学的に重要なパラメータであると同時に、群落内の光環境の推定やリモートセンシングによる群落構造推定にも用いられる。個葉の分光特性の測定には積分球の使用が最良である。しかし十分な面積を持つ葉であれば問題ないが、細い葉(イネ科草本や針葉)の場合、積分球内の光の当たる部分に隙間を生じるため、そのままでは正しい測定ができない。そこで、次の方法で分光特性の測定を行った。まず、葉だけを積分球にセットした場合(隙間あり)の反射率・透過率と、薄い紙(十分に大きい面積のもの)と葉を重ねてセットした場合の反射率を測定した。そして、400ー500nmの波長の光の透過率が非常に小さいという緑葉の性質を利用して、これらの測定値から光の当たる面積に占める隙間の割合を計算し、対象となる葉の反射率・透過率をそれぞれ推定した。この測定方法の妥当性は次のように検討した。クズを材料とし、(1)元の形状の葉、(2)1cm幅に切った葉片、(3)5mm幅に切った葉片について、上記の方法で測定した。その結果、(2)と(3)により得られた値は(1)の値と非常によく一致しており、この測定方法が妥当であることが示された。この方法を利用して、落葉広葉樹、イネ科草本、針葉樹の個葉の分光特性を測定して機能タイプ間の比較を行った。その結果、落葉広葉樹とイネ科草本の葉は750―1300nm付近での吸収が低かったが、針葉樹の葉はこの波長帯での反射率が低く、高い吸収が見られた。


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