| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-143

土壌培養に伴って放出される無機態窒素は、易分解性有機態窒素か? -2:1型鉱物層間を出入りするアンモニウムイオンの寄与-

*松岡かおり(東京農工大・連合農), 森塚直樹(京大院・農)

土壌中の2:1型粘土鉱物の層間は、NH4+やK+を保持する空間である。鉱物層間に保持されるNH4+の量は8200 kgN ha-1(土壌深120cmとして)(Martin et al. 1970)と比較的多く、表層土壌においては全Nの3-10%、下層土壌では、全Nの85%以上が層間NH4+である土壌も存在する(Young and Aldag 1982)。しかし、2:1型鉱物層間のNH4+は、絶えず層間に居続けるのではなく、1)土壌溶液のNH4+濃度、2) NH4+特異吸着の強弱、3)層間末端からの距離、に応じて鉱物層間を出入りしうる。

本研究は、2M KCl溶液による交換態Nの抽出後、その抽出残土の層間NH4+を定量(Silva and Bremner 1966)できる手法を考案した。この定量法を培養と併用することで、既存認識「土壌培養に伴って放出される無機態Nは、易分解性有機態N」であるかどうか?その無機態Nに占める2:1型鉱物層間NH4+の寄与はどれくらいか?が明らかになる。実験は水田生態系を想定した。水田表層土壌を用い、上述1)-3)の環境条件を、1)・3)好気培養[NH4+減少]/湛水培養[増加]、および稲ワラ添加の有[NH4+供給源]/無、2)培養後の風乾の有[強固なNH4+特異吸着]/無、に任意に変え、30℃培養(0・7・28・49・70日)後に上述の手法によって、交換態N濃度、層間NH4+濃度を測定した。その結果、好気・稲ワラ無添加区において、7日間の培養により、交換態Nの増加と層間NH4+の減少が見られた。培養後更に風乾を行うと、交換態Nと層間NH4+の総量は殆ど変化しないものの、層間NH4+量が有意に増加し、その割合が高まった。長期培養の結果と共に、土壌培養に伴って放出される無機態Nに占める2:1型鉱物層間NH4+の寄与を明らかにする。


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