| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-149

湿原における遷移初期種のリター分解と微生物群集の関係

*竹内史子,大瀧みちる,露崎史朗(北大院環境)

リター分解過程は主に微生物分解や物理的破砕、光分解によって制御されているため、温度や養分・水・光などの環境要因に制約される。特に、植生の変化は供給リターの成分や量を決定し、また、植生の発達による被陰の増加・温度の安定化・乾燥の軽減を生じさせるため、分解速度に大きな影響を与える。そこで本研究では、環境変動の大きい遷移初期に着目し、植生変化にともなう初期侵入種のミカヅキグサ、ヌマガヤ2種のリター分解速度の変化と、主に微生物群集との関連性を明らかにすることを目的とした。

調査は北海道サロベツ湿原泥炭採掘跡地の裸地、ミカヅキグサ優占地、ヌマガヤ優占地において行った。各サイトにミカヅキグサ、ヌマガヤのリターバックを設置し、経時変化によるリター分解率およびリン脂質脂肪酸、リン脂質量、リター成分(C, N, P,δ13C,δ15N)、環境要因(地温、照度、土壌含水率)の測定を行った。

リター分解速度は裸地で遅く、ミカヅキグサ・ヌマガヤサイト間では差がなく2年半で30%程度の分解が認められた。したがって、リター分解速度はリターの種差よりもむしろ周囲の環境(特に植被の有無)により規定されていると考えられた。微生物量はヌマガヤサイトで高かった。一方、微生物種はサイト間よりもリター種間で差が見られた。また、ミカヅキグサ・ヌマガヤサイトではともに分解率とNおよびP含有率には正の相関が認められ、特にヌマガヤサイトでは分解にともないPの蓄積が高くなることが示された。以上からミカヅキグサ・ヌマガヤサイトでは分解速度に差はないものの、微生物分解過程が異なることが示唆された。


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