| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-178

開田高原における草原管理と植生の関係

*永田優子(神戸大・発達),丑丸敦史(神戸大・発達),須賀丈(長野県環境保全研究所),小原亮平(神戸大院・発達)

伝統的に人の手により維持されてきた半自然草原は、20世紀後半以降、農村地域のライフスタイルの変化に伴う草原自体の利用価値の低下や管理者の高齢化によって、その面積の減少や草原性生物の多様性の減少が世界的に報告されている。半自然草原の生物多様性の減少要因としては、管理放棄による遷移の進行や、管理の簡略化にともなう撹乱時期の変化が挙げられているが、その具体的メカニズムを示した研究は少ない。

この研究では、木曽馬の産地として半自然草原を維持してきた長野県開田高原を調査地とし、管理方法の簡略や放棄に伴う草原生植物の多様性の減少メカニズムを明らかにすることを目的とした。開田高原では伝統的には火入れと草刈りを一年ごとに交互に行う管理によって飼い葉用の採草を行うために半自然草地が維持されてきた。この研究では、採草のため伝統的管理(火入れと草刈りを両方行う)がなされている草地と、火入れのみ・草刈りのみ・管理放棄と管理簡略の程度が異なる草地の植生(種の多様性)と環境要因(草丈・土壌pH・土壌水分)を比較し、各管理の簡略化による環境要因の変化とそれに伴う植物多様性の変化について解析を行った。

調査結果、(1)伝統的管理がなされる草地で最も植物種の多様性が高いこと、(2)火入れと草刈りを両方行うことで、草丈と土壌pHが他の管理の中間的値をとることがわかった。草丈は撹乱強度の指標であり、土壌pHは土壌環境の指標であると考えられるが、それら変数について中間的環境が生み出されることで高い植物種の多様性が維持されることが示唆された。発表ではこの結果について議論をおこなう。


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