| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-198

水田の湛水開始時期の違いが水生動物群集にあたえる影響

*中西康介・田和康太・村上大介・蒲原俊・沢田裕一(滋賀県大・環境科学)

水田は生物多様性を支える重要な湿地環境であるが,そこに生息する水生動物群集は,栽培管理によって生じる様々な人為的影響を受けると考えられる.本研究では,とくに水管理の影響を明らかにするために,湛水時期に注目し,湛水開始時期の異なる水田間で水生動物群集の種構成や動態を比較した.

滋賀県立大学(滋賀県彦根市)の実験圃場において,2010年2月から6月の期間に実験を行なった.2月と5月に湛水を開始する水田を,それぞれ冬期湛水田,慣行湛水田として設定した.両区画とも湛水開始時期以外の条件は同一であり,無農薬,無化学肥料でイネが栽培された.これらの水田において,動物プランクトン( > 40μm)を対象とした採水調査と,水生昆虫などの大型水生動物( > 1 mm)を対象としたすくい取り採集調査を行なった.また,水田内の環境条件として,水深,水温,植被率などの季節変化を調べた.

動物プランクトン調査の結果,合計でワムシ綱12分類群,ミジンコ亜綱9分類群,カイアシ亜綱とカイムシ亜綱が採集された.冬期湛水田では,4月から5月上旬にかけて動物プランクトンの増加がみられた.一方,慣行湛水田では,5月下旬から動物プランクトンが増加し始め,種構成も冬期湛水田と比べて大きく異なっていた.また,すくい取り採集調査によって,合計で水生昆虫類が26種4023個体,貝類が3種79個体,カエル類幼生が276個体,その他貧毛類(水生ミミズ),ヒル類,等脚類のミズムシなどが採集された.冬期湛水田では,4月から5月にかけて,とくにユスリカ科幼虫の個体数の増加が顕著であった.このように湛水開始時期の違いが水生動物群集の発生パターンに大きな影響をあたえた理由について,他の環境要因を含めて考察する.


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