| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-202

都市緑地におけるテントウムシ群集の年次間比較

*秋山華,吉田智弘(東京農工大・農)

都市化や農地化といった人間活動によって変化している環境に対する生物の反応を明らかにするために、本研究では様々な生息地に普遍的に存在するテントウムシ群集を調査した。テントウムシは同定が比較的容易であり、種によって食性が大きく異なるという特徴を持つ。また、個体の生存や活動に適した温度も種で異なり、このような特徴は、生物群集が人為的撹乱によって変化した環境から受ける影響を検出する要素の一つになる。そこで本研究では、植生被度や人為的撹乱の強度・頻度が異なる生息地(公園、農地)において、気温条件が大きく異なった2009年と2010年の2年間の、テントウムシ種の出現時期や群集構成を比較した。

調査は公園3ヶ所、農地3ヶ所の計6ヶ所に一定の面積で調査地を設け、1ヶ月に3~4回の頻度で1調査地につき1回30分間、目視にてテントウムシ個体を確認する方法を取った。

全テントウムシ種の出現個体数の季節変化を年度間で比較した結果、09年と10年では傾向が大きく異なっていた。公園では09年の4月に、肉食性のナミテントウが優占していたのに対し、前年よりも気温が低かった10年の4月は同じ肉食性であるヒメカメノコテントウが優占していた。また、全調査地の7~8月におけるテントウムシの種構成に着目すると、09年は複数の種が同程度出現していたのに対し、気温が高くなった10年は肉食性のヒメアカホシテントウのみが優占する結果となった。全出現個体数に占めるナミテントウの割合は、年間を通して09年よりも10年は減少していた。以上の結果および生息地の環境条件から、年次によってテントウムシ群集の構成が異なった要因について考察する。


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