| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-207

植物が根を介して土壌中のトビムシ群集に与える影響-根からの炭素供給に着目して-

*藤井佐織, 齋藤星耕(京都大・農), 武田博清(同志社大・理工)

植物の生根から放出される炭素は土壌生物の炭素源として非常に重要であることが知られている。落葉などリター由来の炭素に依存すると考えられてきたトビムシも、最近のトレーサー実験等により生根から放出される炭素に大きく依存していることが実証された。しかし多くの実験ではトビムシを全種まとめて扱っており、群集や種レベルの応答については未だ解明されていない。本研究では、根以外の炭素源が少ないH層からA層に生息する種が生根の影響を強く受けるのではないかという仮説の下、生根の有無がトビムシ群集に及ぼす影響を調べた。

京都市北部に位置するヒノキ天然林において、ヒノキ実生を植えたポットと実生なしのポットを林床に埋めた。土は同じサイトから採取したものを用い、植物体地上部による影の効果等を除くためにポットの上に遮光シートをとりつけた。222日後、ポットを回収し、トビムシの同定と、トビムシに影響を与える要因として葉重量、根重量、DOC濃度、pH、全炭素濃度、全窒素濃度、含水率の測定を行った。

根の有無によってトビムシの個体数、種数、優占種の順位に大きな違いはなかった。しかし、根が無い場合は種によって個体数の制限要因が異なっていたのに対し、根がある場合は多くの優占種が植物の葉重量のみと高い相関をもった。この結果より、トビムシの生育にとって根は必要不可欠なものではないが、根がある場合には、葉における炭素生産が根を介してトビムシ群集を制限するようになると推察される。また、予想に反し、葉重量と高い相関をもった種はH層以下に生息する種のみではなく、他の炭素源が豊富なL層、F層に生息する種も含まれた。このことから根に対する選好性の種間差は、その種が生息する土壌層位に関わらないということが示された。


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