| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-212

北伊豆諸島における異なるセミ群集間のアブラゼミの鳴き声分析

*遠藤暢(京大院農・森林生態), 長谷川雅美(東邦大学), 大澤直哉(京大院農・森林生態)

セミのオスは繁殖のために鳴き、種特異的な鳴き声は種間の生殖前隔離に重要な役割を果たしていると考えられている.演者は以前の発表でアブラゼミとクマゼミの間に、鳴き声のピーク周波数が近いことによるなんらかの干渉が生じている可能性を指摘した.そこから、この2種間に鳴き声による干渉が生じており、進化的に十分時間が経過していれば、クマゼミの生息する地域としない地域のアブラゼミの鳴き声は異なり、生息しない地域でアブラゼミのピーク周波数がずれるか、頻度分布が拡がるかするという作業仮説を立てた.その検証を試みるために、北伊豆諸島において、両種が共存する島とクマゼミの発生がほとんど見られない島のアブラゼミの鳴き声を比較した.

2010年7月初旬から8月中旬にかけて、北伊豆諸島の伊豆大島、利島、新島、式根島、神津島、伊豆半島の下田の計6地点にてアブラゼミのオス個体の採集と鳴き声のサンプリングを行った.得られた録音から音響ソフトを使用して鳴き声の周波数分析を行い、標本から各種形態を測定し調査地間で比較した.

北伊豆諸島産アブラゼミは下田産アブラゼミより、体サイズにおける翅の割合が有意に大きく、飛翔能力の差による島への移入時のボトルネック効果の可能性を示唆していると考えられた.アブラゼミの鳴き声のピーク周波数は、クマゼミの有無による島間(新島と神津島)で有意な差はみられなかった.これらの結果と活動時間の差異を考慮しつつ、北伊豆諸島における、クマゼミがアブラゼミに及ぼす影響について議論する.


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