| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-222

アカスジカスミカメ雄由来成分が雌のパフォーマンスに及ぼす影響

*奥 圭子(中央農研),山根隆史(中央農研・北陸研究センター)

いくつかの生物において、雄が雌に交尾を介して精包を移送する種が知られている。雄の精包は、雌が他雄と再交尾しないようにしたり、雌の産卵能力を向上させたりする。これは、他雄との精子競争における、雄自身の適応度を高めるための戦術の一つと考えられている。

アカスジカスミカメでは、雄が交尾を介して雌に精包を受け渡す。既交尾雌は少なくとも交尾後9日間は再交尾せず、その初期産卵数は未交尾雌よりも多い。これらのことから、精包が雌のパフォーマンスに影響するのではないかと考えられた。これまでの研究により、雄に連続交尾させると、1回目の交尾相手の雌には精子と精包が移送されるのに対し、2回目の交尾相手の雌には精子は移送されるが精包は移送されないことが分かっている。そこで、この現象を利用して精包を持つ既交尾雌と精包を持たない既交尾雌を人為的に作り出し、精包が雌の交尾受容性と産卵能力に影響するか検証した。その結果、精包を持つ雌では40個体中1個体だけが再交尾したのに対し、精包を持たない雌では26個体中10個体が再交尾した。交尾後10日間の産卵数を調べたところ、精包を持つ雌の産卵数の方が精包を持たない雌よりも多かった。これらのことから、アカスジカスミカメでは精包が雌の交尾受容性と産卵能力の両方に関与することが示唆された。

アカスジカスミカメ雌体内の精包は交尾後約7日目には消失する。それにも関わらず、雌は再交尾しない。精包の内容物が雌の交尾受容性に及ぼす影響を検証し、その結果も併せて報告する予定である。


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