| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-243

コイにとっての岸辺環境の有用性とストレス回避のトレードオフ

*高原輝彦(地球研), 山中裕樹(龍谷大・理工), 鈴木新, 本庄三恵, 源利文(地球研), 米倉竜次(岐阜県河川研), 板山朋聡, 神松幸弘(地球研), 伊東尚史(養殖研), 川端善一郎(地球研)

湖などの浅瀬の岸辺環境は、魚にとって採餌や繁殖に重要な場所である一方、水温が日内で顕著に変化することから、生理的負荷が生じるストレスフルな場所と考えられる。しかし、岸辺環境における日内水温変動と魚のストレス反応の関係についてはよくわかっていない。そこで我々はまず、岸辺の日内水温変動パターンを明らかにするため、琵琶湖の内湖において2008年から2010年の魚の繁殖シーズンに水温を調査した。沖合などに比べて、岸辺環境では日内の水温が顕著に変化する日が多くみられた。つぎに、野外調査によって明らかになった岸辺環境の水温変動パターンにさらされたとき、魚がストレス反応を示すかどうかを調べた。実験は、コイCyprinus carpioが日内水温変動にさらされたときに水中に放出したストレスホルモンのコルチゾール量を測定した。水温が安定した状態から上昇したとき、コイはコルチゾールの放出速度を顕著に増加させた。その反応は3時間後には定常状態に戻った。その後、水温を下降させたときなどでは、コイが放出したコルチゾール量に変化はみられなかった。これらのことから、コイは日内の水温が上昇するときに一過性のストレス反応を示すことがわかった。自然環境では、コイの生活史にとって重要な岸辺環境の利用と日内水温変動によるストレスの回避とのトレードオフが存在しているのかもしれない。


日本生態学会