| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-280

全個体ジェノタイピングによるハリママムシグサの遺伝的構造

*深田ちひろ(神戸大院・人環),小林禧樹(兵庫県植物誌研究会),兼子伸吾,井鷺祐司(京都大・農),丑丸敦史(神戸大)

絶滅危惧種の保全にとって、残されている集団の遺伝構造(各集団内の遺伝的多様性・集団間の遺伝子流動の程度)を明らかにすることは、その種の絶滅リスクを知り、適切な保全策をたてる上で重要である。

本研究では、環境省のレッドリストにおいて絶滅危惧種Ⅱ類(VU) に指定されているハリママムシグサ(Arisaema minus)を対象種として、SSRマーカーを用いて全有性個体のジェノタイピングを行い、集団の遺伝構造を調査した。ハリママムシグサは、雌雄別株の多年草で環境省レッドデータブックにおいて兵庫県の1箇所に約100個体のみ生育していると記載されていた。しかし、近年、もう1つ生育場所が発見され兵庫県に大きく分けて2箇所に約800個体ほどが生育していることが明らかになってきた。調査は、2010年6−8月に全有性個体の生育位置の確認とマーキングと、サイズの指標となる地際直径の測定、性別の判定、DNA解析用に葉のサンプリングを行った。さらに、ハリママムシグサについてSSRマーカーの開発を行い、集団の遺伝構造の解析を行った。

調査の結果、全有性個体は529個体で、雄株が454個体、雌株が75個体であり雌株は全体の15%程度であり、性比はオスに著しく偏っていた。また、他のテンナンショウ属同様に、地際直径の大きさに依存して性別が決まっていることがわかった。発表では、これらの生態的な情報とともに、SSRマーカーによる遺伝解析の結果について示し、この種の保全の方策について議論を行う。


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