| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-284

稀少猛禽類サシバの消化生理からみた重要給餌動物種の解明

*糸川拓真(岩大院・農),東淳樹,喜多一美(岩大・農),河端有里子(岩大院・農),渡辺祐策(岩手県鳥獣保護センター)

サシバは,春から夏にかけ日本などに渡り,水田環境に生息する多様な小動物を食物として利用しながら繁殖を行なう中型猛禽類である.しかし,近年生息数が激減しており,2006年に絶滅危惧2類に指定され,本種の保全対策が急務となっている.本研究では,本種の食物動物に着目し,本種の育雛に重要な食物動物を推定することを目的とした.

はじめに,食物動物の試料採取を行ない,試料の体長と湿重量を計測後風乾し乾燥重量を計測した.さらに各試料の単位体重当たりのエネルギー量を測定し,体長とエネルギー量の回帰式を算出した.次に,2008年,2009年2年間の本種の育雛映像データに上記の結果を当てはめ,本種の育雛に要したエネルギー量を推定した.なお,必要な映像データは,河端(2010)の解析結果を使用した.また,本研究では,食物動物種による利用可能なエネルギー量の違いを検証するために,岩手県鳥獣保護センターにおいて,本種の生体(雄・成鳥)1個体を用い,給餌実験を行なった.給餌動物には,シマヘビ,マウス,トウキョウダルマガエル,イナゴを用い,それぞれの吸収効率(同化率)を求めた.

育雛映像の解析結果は,2008年,2009年の結果共にトウキョウダルマカエル,ヘビ類,小型哺乳類などの食物動物が高いエネルギー割合を示し,この3種で全体の約70%以上を占め,育雛におけるこれらの給餌動物種の栄養依存度が高い事が示唆された.給餌実験では,シマヘビの同化率が最も高く,マウス,トウキョウダルマガエルと共に80%前後の値を示したのに対し,イナゴの同化率は約30%と極めて低い値を示した.ペリットにはイナゴの足や外殻が多く確認され,堅い外殻に覆われた昆虫類は消化が難しい事が示唆された.

なお本研究は文部科学省科学研究費補助金(課題番号19510231)の一部として行なった.


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