| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-291

生息環境の違いが絶滅危惧種ダルマガエルの食性に及ぼす影響

*木田耕一(信大院・農),大窪久美子,大石善隆(信大・農),四方圭一郎(飯田市美博)

ダルマガエルRana porosa brevipodaは東海から瀬戸内海沿岸の温暖な地域を主な分布地とし、かつては水田における普通種であったが、現在では個体数の減少が進行し、環境省により絶滅危惧ⅠB類に指定されている。伊那盆地は本種の分布の北限であると共に隔離分布地でもあり、県の絶滅危惧ⅠA類に指定されている。そこで本研究は伊那盆地における本種の保全策を検討するため、知見の少ない食性を把握し、またこれに影響を及ぼす環境条件について考察することを目的とした。

調査対象地は樹林に囲まれる地域と大規模水田地域、市街化地域の異なる3つの周辺環境を有する地域を各2地域ずつ選定した。食性調査は各地域で7~9月に月1回、ダルマガエルを20~30個体を目標として捕獲し、強制嘔吐法により胃内容物を採取した。捕獲個体は頭胴長および体重、性別を記録した後に放逐した。胃内容物はエチルアルコールにつけて保存し、実体顕微鏡を用いて餌動物の同定、体長と個体数の計測を行った。また各地域において本種の潜在的な餌資源である動物相を把握するため、各地域で8,9月に月一回、スウィーピング法により主に昆虫相を捕獲し、同定および個体数の測定を行った。

ダルマガエルは全地域合計で7月に105匹、8月に149匹、9月に151匹捕獲した。地域によって捕獲できた個体数にはバラつきがあり、目標の個体数を捕獲できない場合もあった。スウィーピングによる調査では全地域合計で8月に3382匹、9月に2647匹の節足動物を捕獲した。ほぼ全ての地域で9月に個体数が減少していたが、捕獲した生物種の組成はどの地域でも類似していた。発表ではダルマガエルの胃内容物とスウィーピング調査の結果との類似性比較や、時季、地域、体サイズによる食性の変化について考察を行う予定である。


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