| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-296

環境保全型水田における水生ミミズの種構成とバイオマスの季節変動

谷地俊二*,大高明史,金子信博

水田には多くの生物が生息するが、農薬管理や生物多様性の視点で行なわれる調査の多くは、地上部や田面水中に生息する動植物のみを評価対象としている。環境保全型水田の底質には多数の水生ミミズ類が生息し、雑草種子埋没による抑草効果や、底質中と田面水中間の窒素などの物質循環を促進させる効果が知られている。よって水田管理の工夫によりミミズ類の生理生態的特性を農業に利用できる可能性がある。しかし環境保全型水田でミミズ類の動態を扱った研究例は少なく、実際の種構成やバイオマスは明らかではない。そこで、環境保全型水田におけるミミズ類の動態の解明を目的として、神奈川県鎌倉市にて2010年5月から11月まで、ミミズ類の種構成とバイオマスの季節変動を調査した。ミミズ類の同定は生殖器官および剛毛の形態を観察して行なった。バイオマス推定は、ミミズ類の個体重量と個体サイズ (撮影による投影面積)の関係から推定した。調査地では6種の水生ミミズ類が確認され、個体数ではユリミミズ (Limnodrilus hoffmeisteri)、バイオマスではエラミミズ (Branchiura sowerbyi)がそれぞれ調査期間中の平均値で優占した。ミミズ類の総バイオマスは5月から減少しはじめて8月が最も低く、9月以降増加した。全種を合算した調査期間中のバイオマスの平均値は25 g wt. m-2で、畑地で作物の生育に効果がある指標としてのバイオマスレベルに匹敵した。この研究により、ミミズ類が水田生態系機能への寄与を知る上で必要な、基礎的情報を提供できる。また出現したミミズ類の中では、エラミミズについてサイズ構成の季節変化から生活史の概要を明らかにできた。


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