| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-355

市民協働植物相調査を基盤とした地域づくりの実践

*伊藤千恵(十日町市立里山科学館キョロロ), 山岸洋貴(弘前大・白神),三上光一(農環研・生物多様性),沢畠拓夫(農研機構・果樹研),永野昌博(十日町市立里山科学館キョロロ)

十日町市松之山は、他の中山間地農村と同様、高齢化・少子化に伴い過疎化が進んでおりに悩み、棚田・ブナ林・日本三大薬湯を観光資源として利用した交流人口の増大を図ることで地域活性化することを目指している。当科学館は、市民への地域自然に関する教育普及活動を通した市民ガイドの育成により、地域観光・交流事業への貢献を視野に入れた様々な活動を行っている。ここではそのひとつである花ごよみ調査に基づいた案内ルート化の取り組みについて報告する。

花ごよみ調査は、選定されたルートで降雪期を除く毎月1回調査を行い、ルート内に出現する開花個体について参加者とともに発見・記録する調査である。定期的に踏査することで、植物をはじめとする自然資源だけでなく、ルート内に出現する地域資源を発掘し、より深く理解することにつながる。また、この調査は市民を案内人に育てるといる役割も担っており、調査では参加者全員に出現した地域資源について知っていることを言ってもらうため、参加者は多くの地域に関する多様な知識を共有することができる。調査後には、図鑑などを調べて観光客向けに展示物を作ることで、地域の魅力を伝える事を学ぶ効果がある。

さらに、地元温泉組合と連携しすることで、ルートの選定の際に意見をもらったり、モニターツアーを実施したりして、的確に観光客のニーズを反映することが可能となっている。1年間の調査結果をまとめた冊子を温泉街で配布することで、宣伝に活用することもできる。

この方法を確立することで、最終的には市民主体で地域資源の発掘、活用が行えることを目指しているが、現在いくつかの課題も浮かび上がっており、それらを市民と協力しながら解決し、松之山の地域活性につなげていきたい。


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