| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-027

鳥はどこへタネを運ぶのか?-同種・他種の結実木と散布種子の空間分布-

*直江将司(京大・生態研),酒井章子(地球研),正木隆(森林総研)

液果樹木の種子散布は、主に植物と果実食者間の直接的な相互作用の結果として研究されてきた。しかし、果実食者を介した樹木間の間接的な相互作用も種子散布に大きく影響しうる。発表者らは、これまでに液果優占樹種の結実で森林の果実密度が果実食者の利用できる量を上回ることにより、低密度樹種の果実持ち去り率や種子散布距離が減少するという、低密度樹種に対する負の影響を明らかにしてきた。一方で、優占樹種の結実は、低密度樹種の種子散布場所を多様にしているかもしれない。例えば、低密度樹種の散布種子は、優占樹種の凶作年には同種の結実木下に集中するのに対し、優占樹種の豊作年には果実食者が低密度樹種-優占樹種間を行き来することで優占樹種の結実木下にも集中するかもしれない。本研究では、鳥散布種子の同種や他種の結実木下への散布が、優占樹種の豊凶によって変化するかを明らかにする。

2006~2008年にかけて、茨城県小川試験地に格子状に種子トラップを設置、液果樹木の結実期に種子を回収した。回収種子から優占樹種ミズキと低密度樹種5種について樹種毎に、鳥散布・自然落下種子の空間分布を求めた。種子に果肉が無ければ鳥散布種子とした。解析には被説明変数と説明変数に空間自己相関を考慮したintrinsic CAR model を用いた。

解析から、ミズキ凶作年には低密度樹種の鳥散布種子は同種結実木下に集中するものの、豊作年には集中度が減少することが分かった。このことはミズキの結実豊凶によって散布場所が変化することを示している。また、ミズキは豊作年には多くの果実をつけることでミズキ結実木下に、ミズキ結実ピークと結実期が重なる他種の種子を誘引していた。結実期が重ならない樹種ではミズキの豊凶に伴う変化は小さかった。これらの結果は、ミズキの結実によって低密度樹種の種子が多様な場所に散布されることを示唆している。


日本生態学会