| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-036

地上部刈り取りに対するミヤコザサの応答

*壁谷大介,齋藤智之(森林総研),長谷川元洋,岡本透(森林総研・木曽),清野達之(筑波大・八ヶ岳)

ササは日本の森林に広く分布し、樹木の更新の強力な阻害要因となるため、その密度管理は重要な課題となっている。一方で近年増加しているシカ食害によるササ・バイオマスの減少も重要な問題の一つである。

ササ属は、地下茎構造が発達し大きなバイオマスを地下部に分配している。またクローナル植物であり、地下茎を介した資源の移動に関する生理的統合の存在も知られている。本研究では、これらのササの性質が、地上部損傷に対してどのように機能するか明らかにすることを目的としている。そのため、筑波大学八ヶ岳演習林内のミヤコザサ群落において、2008~10年にかけて、毎年一回初夏に地上部を切除した場合のミヤコザサの地上部バイオマスの変化を追跡した。また隣接する林分に2×5mのトレンチ処理区を用意し、地下茎を介しての物質移動を制限した場合の、地上部刈り取りの影響を評価した。同時に07年(通常区)、08~10年(トレンチ処理区)の11月に1m2の範囲の地下茎を回収し、地下茎サイズと再生地上部の関係を調べた。

4回の堀取りで得られたミヤコザサの地下茎は、最長で238cmに達する一方で、先端を含む地下茎を除外しても大半が50cm以下であった。地下茎長の分布は、堀取りに伴う断片化を想定した場合の分布と明確に異なることから、自然条件下において地下茎の断片化が進んでいることが示唆された。また地下茎長が長いほど、接合する着葉シュート数が多かった。これは地下茎長の伸長に伴う節数の増加と資源サイズの増加の二つの影響が考えられる。通常区とトレンチ処理区のいずれも、繰り返しの地上部刈り取りに対して再生する一方で、トレンチ処理による再生地上部量の制限はみられなかった。これは、地下部の貯蔵資源と再生地上部自身の生産性の高さの両方が影響していると考えられる。


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