| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-050

落葉広葉樹林における各環境要因・及び林冠構成種の違いが複合的に林床の植物相に及ぼす影響

*大山拓郎, 紙谷智彦 (新潟大・院・自然科学)

林冠被覆の程度や、林冠構成種の違いは林内の光環境をモザイク状に多様化させる。また、展葉・落葉フェノロジーは、林内に季節的な光環境の変化を生み出す。一方、林床の植物種多様性は低木層の被陰によって低下することが知られている。したがって、林床の植物相は、立地の物理的環境と、林冠層・低木層がもたらす林内環境によって、その出現が規定されると考えることができる。

そこで本研究では、季節的な林内環境の変化に着目し、林床植物の出現を規定する複合的要因を明らかにすることを目的とする。

調査は新潟県阿賀町の林冠条件が異なる広葉樹二次林で行った。二次林内に100m2の調査プロットを40個設置し、林冠構成種の毎木調査を行った。林床の植生は、各プロット内に1m×1mのコドラートを40個設置し、出現した全ての維管束植物を草本層(h≦0.5m)、低木層(0.5m<h<2m)に分けて記録した。各プロットの季節的な林内環境の変化を評価するために、3-4日間隔で早春の融雪状況を記録、展葉期・落葉期には林内のrPPFDを6-8日間隔で測定した。その他の環境要因として、夏緑期にLAI、pH、土壌水分、土壌EC、リター層の厚さを記録した。

優占樹種によってプロットをブナ優占、ナラ優占、ナラ枯れ跡地の3タイプに分類したところ、融雪速度、展葉・落葉速度は各タイプ間で有意に異なった。CCAによる直接傾度分析の結果、各プロットは林冠構成種と低木層構成種の組み合わせによって、異なる環境傾度に座標付けられた。INSPANにより、各タイプの指標種を抽出したところ、ブナ・ナラ枯れ跡地タイプでは常緑植物が、ナラタイプでは春植物を含む多年草や落葉性の植物が特徴付けられた。以上の結果より、落葉広葉樹林に分布する植物相は、構成樹種とそれらが生み出す季節的な林内環境の変化によって出現が規定されていることが示唆された。


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