| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-095

ニホンタンポポとセイヨウタンポポの雑種の進化 ~戻し交配雑種の生殖能力~

*満行知花(九大・理), 保谷彰彦(東大・(院)総合文化), 矢原徹一(九大・理)

被子植物での無性的な種子形成を無融合生殖と呼ぶ。無融合生殖を行う系統は、クローンの繁殖にもかかわらず、しばしば著しい変異性を持つことが知られている。このような変異性は、有性生殖を行う近縁種とのまれな交配によって生じたと考えられてきたが、実証研究はほとんどない。現在日本では、3倍体のセイヨウタンポポと2倍体のニホンタンポポの交配で生じたと推測されている、無融合生殖を行う雑種(3倍体、4倍体)が広く分布している。雑種、特に3倍体は高い遺伝的変異性を持つことが明らかになっている。私達は、これまでの研究で、3倍体雑種とニホンタンポポとの人工交配によって、戻し交配雑種は遺伝的な変異性が増大することを明らかにした。しかし、戻し交配雑種が、雑種第1代と同様に無融合生殖を行うことが出来るのかについては明らかになっていない。

そのため、人工交配によって作出された戻し交配雑種33個体について、無性的にできる種子数を調べた。方法は、2010年1月20日~6月7日に、戻し交配雑種のつけたつぼみに袋がけを行い、種子を採集した。種子は、黒く、ふくらみがあり、硬い、という基準で、しいな種子と完全種子を区別し、カウントした。

その結果、33個体中11個体は、全ての頭花において、しいな種子しか生産されず、無性的には全く種子を生産することが出来なかった。また、その他の個体もほとんどは、1つの頭花あたり数個の完全種子をつけるだけだった。これらの結果から、戻し交配雑種のほとんどの個体は、無融合生殖を行う能力があまりないことが明らかになった。ただし、3個体のみ、1つの頭花あたりの平均が30個以上の、比較的数多くの完全種子をつけた。数多くの完全種子をつけることの出来る戻し交配雑種が野外で生じた場合、雑種の中には戻し交配によって生じた雑種も含まれ、遺伝的変異性が増大している可能性がある。


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