| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-101

一斉開花するバイケイソウの種子繁殖とクローン成長が個体群構造に及ぼす影響

*草嶋乃美,加藤優希,大原雅(北大・院・環境科学)

本研究の対象種バイケイソウの開花個体は、種子繁殖を行うが、個体により開花時にクローン成長も行う。バイケイソウの開花には年毎に豊凶があり、またその周期は集団によって異なる。本研究では、集団の違いによる種子繁殖とクローン成長への依存度を評価し、2つの繁殖様式が個体群の維持・形成に与える影響について明らかにすることを目的とした。

調査は2010年に恵庭、野幌、千歳、荻伏の4集団で行った。前年の結果より恵庭は種子繁殖由来の幼個体およびクローン成長由来の大型の個体が多く、他集団では種子繁殖由来の個体は少ないことが明らかになっている。また、個体の経年調査により恵庭では娘ラメットのサイズが他集団より大きく、恵庭でのみ1~2年前の開花個体より形成された娘ラメットの開花が確認された。この他、2010年は4集団いずれにおいても開花が生じたが、10m×10m内の開花個体数を調べたところ、恵庭では最多の228個体、一方、荻伏では最小の8個体が開花しており、集団間で開花規模が異なることが明らかになった。各集団の種子生産率は、恵庭と野幌で高く、集団間で種子繁殖への依存度が異なっていた。このように集団により開花規模やそれに伴う種子生産量は異なるとともに、実生の生存率はどの集団でも低く、数年間隔で起こる開花では恵庭のように多くの幼個体を維持できない。しかし、恵庭では娘ラメットは形成されてから開花に至る開花周期が他集団より短く、実生の補充が頻繁に行われていると考えられる。このように、バイケイソウでは種子繁殖は、集団により種子生産量だけでなく短い開花周期によって安定的に幼個体を補充する一方、クローン成長は生存率が高く、短期間で開花に至る個体を確実に補充することで個体群の維持・形成に寄与していることが示唆された。


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