| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-123

湿地帯に成立するアカエゾマツ林の動態に水分環境が与える影響

*竹内史郎,加藤聡美(北大・院・環境科学),吉田俊也(北大・北方生物圏FSC),安江恒(信大・農)

湿地林の成立・維持機構に水分環境が与える影響を明らかにすることを目的とする。成立する樹木の個体レベル・個体群レベルの応答について、複数の空間スケールかつ長い時間スケールを対象に評価する。調査地は北海道大学雨龍研究林の泥川流域に残存するアカエゾマツ湿地林である。この森林においてアカエゾマツは胸高断面積の98%を占める優占種であり、数~十数本程度の単位でパッチ状に成立している。このような分布が形成された要因として、時間的・空間的な水分環境の変動の影響が考えられている(松田1989)。ここでは、①水分環境の空間的異質性によって、同じ湿地林内であっても、アカエゾマツ立木の現存量及び動態が局所的に異なる。②水分環境の時間的変化がアカエゾマツ林の動態を規定している。という仮説を検証する。1991年に設定された0.5ha(100×50m)のコアプロットで毎木調査と水準測量を行った。また、その中央部を横切り、主要な河川流路間を結ぶ長さ500mのベルトトランセクトを設置した。コアプロット内における立木の空間分布をみると、樹木はマウンド上に集中して立地し、サイズ構造は明瞭なL字型であった。また、コアプロット内の地下水位(8~11月の5回の観測の平均値)は-2cm~-20cmの間で空間的に変動していた。水位の空間分布と樹木の動態パラメータの変化(1991~2010年の成長量・枯死量)の対応関係を調べることによって、仮説①を検証する。さらに、コアプロットの一部において成長錐を用いて抽出した、年輪コアを用いて齢構造を把握することにより、仮説②について考察する。


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