| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-150

竹林におけるケイ素の循環

*梅村光俊, 竹中千里(名大院・生命農)

近年、日本各地の里山において、管理が行き届いていない広葉樹林やスギ・ヒノキ人工林へ外来植物であるモウソウチクが侵入し拡大している。タケの侵入が森林生態系に及ぼす影響についてはさまざまな研究が行なわれているが、物質循環系への影響に関する研究例はまだ少なく、竹林内における物質循環についても基礎的データが不足している。一般に、タケはイネ科でケイ酸集積植物として知られており、竹林におけるケイ素(Si)の循環は特異的であると推測される。そこで本研究では竹林におけるSiの循環系を解明することを目的とした。

調査は、愛知県豊田市および瀬戸市のモウソウチク林(3サイト:15 m×15 m区画)で行い、Si蓄積量と供給量を求めるため、タケの各器官とリターフォールを採取した。稈、枝、葉の現存量は胸高直径から奥田ら(2006)の推定式により算出し、地下茎および根の現存量は各サイトにつき5箇所(地下茎:方形50 cm四方、深さ30 cm内、根:深さ30 cm土壌コア)から採取し算出した。2009年12月に各サイトから採取したタケ1本の各器官および地下茎、根のSi含有量を分析し、それぞれの現存量に乗じてSi蓄積量を求めた。また、各サイトにリタートラップ(方形50 cm四方を5つずつ)を設置し、2008年8月~2009年7月まで毎月リターを回収し器官別のリターフォール量を算出した。そして、器官別のSi含有量を求め、年間リターフォール量に乗じてSi供給量を算出した。結果、3サイトでの全Si供給量は77~310 kg/ha・yrであり、一般的なヒノキ人工林におけるSi供給量に比べ20倍~100倍程度と高かった。器官別のSi供給では、タケ葉によるSi供給量が全Si供給量の71~88%を占め、葉によるSi供給が大きいことが明らかとなった。

引用文献:奥田史郎ら(2006)森林総合研究所 平成18年度研究成果選集. pp42-43.


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