| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-154

安定同位体分析による海洋高次捕食者の食性解析

南 浩史*,清田雅史,仙波靖子,米崎史郎,余川浩太郎

気候変動が海洋生態系や水産資源に及ぼす影響が近年注目されており、長期にわたる海洋高次捕食者の食地位や食性を解明することは海洋生態系構造を把握する上で重要な知見となり得る。GLOBEC/CLIOTOPでは中西部北太平洋における生態系や食物関係に関する情報が不足していることが指摘されている。炭素、窒素安定同位体分析は生物の食物関係や生態系の構造の解明に有効な手法であり、生物の栄養段階の数値化、食性解析、摂餌環境の復元等が可能となる。本研究では、1985年より漁船や調査船によって収集した海洋高次捕食者や水産資源の餌料としても重要である中位栄養段階の生物の安定同位体分析を行い、中西部北太平洋における高次捕食者の食性や食地位に関して解析を行った。試料は中西部北太平洋において、1985~1991年の流し網操業、1999~2002年の流し網及び延縄操業、2010年の延縄及び中層トロール操業によって得られた海鳥類14種、まぐろ・かじき類6種、頭足類9種、ハダカイワシ類などその他魚類33種等である。これら生物の筋肉の炭素、窒素安定同位体比を分析した。その結果、アホウドリ類の窒素安定同位体比が13‰以上と高く、メカジキ、メバチ、ヨシキリザメも高い値を示した。小型アカイカ、ツメイカ、スジイカの頭足類、サンマ、カタクチイワシやハダカイワシ類等の小型魚類が窒素で10‰前後と中位に位置した。頭足類の方が小型魚類よりも高い傾向が見られ、高次捕食者の中でも高い値を示す生物は頭足類に強く依存している可能性が考えられた。年代別に値を比較した結果、1985~1991年におけるハイイロミズナギドリの窒素は平均で11.6‰であったのに対して、1999年以降は9.0‰と低くなる傾向がみられ、本種の食性や食地位が年代とともに変化していることが示唆された。


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