| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-156

二枚貝種別による金属蓄積傾向の差異

*武内章記, 柴田康行, 田中敦(国環研)

沿岸域は陸域と海域をつないでいるために, 陸域からの人間活動の影響を受けやすい. そのために沿岸域に生息している生物を用いた環境モニタリングが盛んに行われている. 特にムラサキイガイなどのイガイ属を用いた沿岸域の環境モニタリングは「Mussel Watch」と呼ばれ, 化学物質や重金属の実態調査に用いられている. しかしながら単一の種では全球レベルの沿岸域を補うことができない. また異なる二枚貝種による化学物質や重金属の取り込み方の相違が不明である. そこで本研究では国内5カ所の沿岸域で,異なる2種類ないし3種類のイガイ属とカキを各地点で採取し, それらの金属濃度を測定して比較した. 栄養塩濃度には差は見られないが, Ca, Sr, Mn, Cu, Znはカキの方がイガイ属よりも蓄積しやすく, CoとNiはイガイ属の方が蓄積しやすい傾向がある. また金属濃度の比較だけでは各沿岸域の汚染状況によって蓄積濃度が異なるため変動幅が大きくなる. そこで周期表における同じ族の金属, もしくはよく似た性質を示す金属の割合でも比較した. カキとイガイ属の金属の取り込み方は, 濃度の比較からも相違があることが分かっているが, Fe/NiとCo/Niを比較した場合には本研究で比較したイガイ属にNiの取り込み方の相違があることが分かった. また亜鉛族の金属(Zn, Cd, Hg)を比較した場合には, ムラサキインコにCdとHgが蓄積しやすい傾向が明らかになった. こうした同じ環境で共存する生物の金属分別作用は, 重金属の汚染状況と生態系の金属循環を明らかにする上で重要な情報となる.


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