| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-181

アカネズミにおけるタンニンへの馴化成功のプロセスを探る

*泉佳代子(北大・環境科学),島田卓哉(森林総研東北支所),齊藤隆(北大・FSC)

ミズナなどのコナラ属樹木の種子(堅果)には被食防衛物質であるタンニンが高濃度で含まれており、主要な捕食者であるアカネズミにおいても、堅果の過剰な摂取は有害な影響をもたらす。これに対し、アカネズミはタンニン結合性唾液タンパク質とタンナーゼ産生細菌の活性を介した馴化作用によって、タンニンを無害化し、堅果を利用できることが報告されている。これまでの研究から、コナラ属種子の分布しない三宅島のアカネズミは、ミズナラなどの分布する地域のアカネズミと比べて、タンニンに対する馴化能力が低いことが明らかになっている。では、馴化に成功できるネズミとできないネズミとではどのような違いがあるのだろうか?堅果を与えたネズミの馴化プロセスに着目して、馴化成功の要因を検討した。

2009年秋に、三宅島と岩手県盛岡地域(ミズナラが分布)とでアカネズミを捕獲し、それぞれ2週間の馴化期間を設けた後、5日間ミズナラ堅果のみを与える摂食実験を行った(三宅島馴化群(実験群)、非馴化群(対照群):各N =10、岩手馴化群、非馴化群:各N =8)。その結果、地域間で、非馴化群には摂食実験中の体重変化に違いは見られなかったが(P = 0.9800)、馴化群では有意な差が見られた(P = 0.0446)。馴化成功に影響する要因を検討するため、馴化成功の指標として体重減少率を目的変数とし、摂食量、消化率、窒素消化率、唾液タンパク質分泌能力に関するデータを説明変数として、重回帰分析を行いステップワイズ法により説明変数の選択を行った。その結果、体重減少率は、摂食量、窒素消化率、唾液分泌速度が大きいほど小さいことがわかり、それぞれの標準偏回帰係数は0.604、0.198、0.171であった。このことから、馴化成功者は高い摂食量を維持しており、いかに生理メカニズムを調整できるかが重要である、ということが示唆された。


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