| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-186

北海道におけるオオセンチコガネ Phelotrupes auratus の生息地評価

*義久侑平(酪農学園大学大学院),堀繁久(北海道開拓記念館),梶光一(東京農工大・農),吉田剛司(酪農学園大・環境)

オオセンチコガネは大型草食獣の糞に依存する食糞性コガネムシの1種で,北海道ではエゾシカの糞を利用している.道内のオオセンチコガネの分布域はエゾシカの潜在分布域と大きく重なっていることが堀・梶(2004)によって報告されているが,オオセンチコガネの分布域はむかわ町から網走市にかけての南東部に集中している.これはエゾシカ以外の要因によって分布が制限されている可能性が示唆されるが,詳しい調査結果は不足している.そこで本研究では,生息適地モデルを使用したオオセンチコガネの分布制限要因の推定を目的とした.

生息適地モデルの作成にはロジスティック回帰分析を使用した.堀・梶(2004)の分布データと新たな調査によって得たオオセンチコガネの生息情報の有無を目的変数とし,説明変数にはエゾシカの潜在分布,標高,積雪深,道路密度,河川密度,森林面積の6つの変数を使用した.分析には潜在分布が必ず変数に含まれるように設定し,相関係数が0.5以上の変数同士が同じモデルに入らないように調整した上で尤度比によるステップワイズ変数増加法を用いて変数選択を行い,ロジスティック回帰分析を実施した.モデルの評価にはROC曲線下の面積(AUC)および内田(2004)によって提唱されている新たな寄与率Ru2を使用した.

ロジスティック回帰分析の結果,潜在分布・積雪深,潜在分布・道路密度,潜在分布・積雪深・道路密度,潜在分布・積雪深・森林面積の4つのモデルが作成された.その中でAUC=0.851,Ru2=0.854と最も高い値を示したモデルは潜在分布・積雪深であった.

オオセンチコガネは土中越冬することが確認されている.積雪深の多い土地では雪解け水の量が増加し春先の脱出に影響が出ることが予想されるため,積雪深の多い土地を避けていることが考えられる.


日本生態学会