| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-228

アルゼンチンアリの密度は原産地では低かった!コロニー構造との相関について

*坂本 洋典(北大), 砂村 栄力(東大), 西末 浩司(東大), 東 正剛(北大)

一般に、外来生物の密度は侵入地より原産地で高くなると考えられている。南米原産の侵略的外来アリ、アルゼンチンアリLinepithema humileは、世界各地の侵入地において在来アリを駆逐し、生態系に負の影響を及ぼすことが重大な問題となっている。在来アリ駆逐の機構として、多女王性のアルゼンチンアリは在来アリより繁殖力が高く、高密度になることから、資源競争に勝つと考えられる。また侵入地ではアルゼンチンアリは巨大なスーパーコロニーを形成し、種内でのなわばり争いが存在しないことも密度を高める要因と考えられる。他方、先行研究では、原産地と侵入地間に密度の有意な違いは認められなかった。しかし、同研究はアルゼンチンアリの繁殖期前の調査であり、個体数の変動を考慮すると、最盛期では有意な差が見られる可能性がある。そこで我々は、原産地(アルゼンチン北部)で2010年3月、侵入地(日本)で同9月の密度最盛期に各4地域でアルゼンチンアリの密度を調査した。密度の指標として、餌に動員される働きアリの個体数と、行列の定点を30秒間に歩く働きアリの個体数を用いた。どちらの指標でも、侵入地における個体数は原産地に比べ有意に多かった。侵入地および原産地のコロニー構造を、敵対性試験を用いて調べると、原産地の殆どの調査地に複数のSCが観察されたのに対し、侵入地では単一のSCのみしか見出されなかった。さらに、原産地ではベイトにSolenopsisAcromyrmexWasmanniaなどの競合アリ種が集まり、種間競争が示唆されたのに対して、侵入地ではアルゼンチンアリと資源競争を行う可能性があるアリは観察されなかった。これらの結果から、餌などの資源をめぐる種内競争および種間競争によって、原産地のアルゼンチンアリ密度は抑制されていると示唆された。


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