| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-274

タムシバ(Magnolia salicifolia)集団の遺伝的多様性と遺伝的構造

*川島直通(名大農),村西周平(名大院生命農),鈴木節子(森林総研),玉木一郎(岐阜県森文ア),戸丸信弘(名大院生命農)

タムシバ(Magnolia salicifolia)はモクレン科モクレン属の落葉広葉樹である。本州から四国、九州にかけて広く分布し、主に日本海側に生育する。これまでに、タムシバは本州中部を境界に東西で異なる形態形質をもつことが報告されているため、何らかの適応的進化が生じている可能性が考えられる。近年、日本国内において広範囲に分布する広葉樹種を対象として地理的変異の研究が行われてきたが、それらの研究ではアロザイムやDNAマーカーを用いており、形態形質を用いた研究は少ない。本研究では地域間で異なる形態形質をもつタムシバを対象に、核と葉緑体マイクロサテライト(SSR)を用いて遺伝的多様性と遺伝的構造を明らかにするとともに、葉の形状の地理的変異を明らかにして、タムシバの小進化の過程を検討することを目的とした。タムシバの分布域を網羅するように選定した24集団において集団あたり平均27.3個体から試料(葉)を採取し、核SSR 11遺伝子座を用いて遺伝子型を決定し、集団遺伝学的解析を行った。DA距離にもとづいた近隣接合樹の作成およびSTRUCTURE解析を行った結果、本州中部を境界にして東西で2つの系統に分かれることが示唆された。この境界は、形態的に異なる個体群の分布の境界と一致する可能性が考えられる。また、2つの系統の境界にあたる地域に糸魚川‐静岡構造線が存在することから、この地質構造がタムシバの分布変遷に何らかの影響を与えた可能性が考えられる。本研究ではさらに葉緑体SSRを用いた遺伝解析を行い、核SSRを用いた結果との比較を行い、また、楕円フーリエ法を用いた葉の形状の解析を行い、遺伝的構造との関係を検証する予定である。


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