| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-283

ツルクモヒトデ目(棘皮動物門:クモヒトデ綱)の分子系統地理

*岡西政典(東大・院・理), Tim O'Hara(MUS VICT), 藤田敏彦(国立科博)

クモヒトデ綱は、熱帯から寒帯、潮間帯から深海までのあらゆる海域に生息しており、現生では世界で2200種以上が知られている、棘皮動物の中では最も種多様性の高い動物群である。ツルクモヒトデ目は、現在4科48属に約190種を含み、多くが100–4000mの深海において、岩やソフトコーラルなどの他の動物の上で生活している。そのため標本が得にくく、系統分類学的な研究が後れている。系統地理学的な研究も少なく、Kroh (2004)やHarzhauser et al. (2007)が、ユウレイモヅル科の現生種の分布と化石記録を比較し、インド洋から西太平洋海域に広く分布する本科が、西テチス海の由来であることを示した研究が知られるのみである。

本研究では、西太平洋海域を中心とした海域から得られた、約70種のツルクモヒトデ目の核の18S rRNA領域とミトコンドリアの16S rRNAおよびCOI領域の配列を基にした分子系統解析を行った。得られた系統樹と体内骨片の形態観察の結果から、ユウレイモヅル科はタコクモヒトデ科のAstrobrachion属を起源とする単系統群である事が支持された。Astrobrachion属は現在、オーストラリア、ニュージーランドの周辺海域にのみ生息している。地史的にみると本海域と西テチス海の交流は薄かったと考えられ、また、現生のユウレイモヅル科の各属の分布をみると、本海域には全ての属が分布している。このことから、ユウレイモヅル科の由来はオーストラリア、ニュージーランド海域である事が示唆された。


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