| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-012

マイクロサテライトマーカーを用いた北海道のコナラ林における遺伝的多様性と集団分化の解析

*本間祐希・並川寛司(北教大・札幌・生物),河原孝行・北村系子(森林総研北海道)

コナラが優占する森林の分布北限は北海道にあり,日高から胆振を経て石狩低地帯北部に至るとともに,渡島半島にも隔離的に分布する.植村・武田(1987)は,北海道における温帯植物の地理的分布を類型化し,コナラと類似の分布を示す一連の種群に対しモミジガサ型分布群と名付け,この群に属する種が,最終氷期最寒冷期に日高および渡島半島のレフュージア(避難地)に分布を縮小し,後氷期そこから分布を拡大したことを推定した.本研究は,北海道のコナラ優占林から10地域の個体群を選び,系統地理学的な手法を用い,その分布拡大過程を示すことを目的とした.

10個体群,計453個体の幹あるいは枝の形成層からDNAを抽出し,核マイクロサテライト11座を用いて決定した遺伝子型から,遺伝的多様性(Allelic richness,FISHE )と遺伝的分化の程度(DARST,系統樹)を評価した.また,ベイズ法に基づくプログラムSTRUCTUREを用い,遺伝構造の検出と,各推定集団のF値(遺伝的分化の程度)に着目し,集団分化について考察した.

道内のコナラ個体群は集団分化が比較的進んでおり,特に日高地方の4集団(広富・新栄・歌笛・杵臼)は遺伝的多様性が相対的に高いだけでなく,他集団との対立遺伝子の共有性も高く祖先系に近い遺伝的組成を示した.また,広富の集団を起点とした場合,地理的距離と遺伝的距離との間に正の相関が認められるとともに,この集団が系統樹の中心に位置することは,日高地方にレフュージアが存在したことを示唆している.一方,隔離的に分布する大沼の集団は,日高地方と大きく異なる遺伝構造を示すと共に,集団の分化も明瞭であった(高いF値).このことは,両地域の集団が最終氷期最寒冷期以前から分離していたことを示唆している.


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