| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-028

富士山5合目森林限界上部におけるゴヨウマツ稚樹の分布とその要因

*別宮(坂田)有紀子(都留大),西 教生(都留大)

富士山5合目の森林限界上部には、低温や乾燥、貧栄養、撹乱や強風などに耐性を持つ蘚苔類や草本類、木本類がパッチ状に分布している。演者らはそこにゴヨウマツの稚樹が多数生育していることを最近発見した。富士山ではゴヨウマツは1~4.5合目の針葉樹林内に点在するが、5合目付近には繁殖個体はほとんど存在しない。それにも関わらず5合目森林限界上部にゴヨウマツ稚樹が多数生育しているのはなぜなのだろうか?我々は、ゴヨウマツがどのようにして5合目森林限界上部に定着しているのかを明らかにするために、ゴヨウマツ稚樹集団の分布と生長、種子散布者との関係について調査をおこなっている。本発表では、ゴヨウマツ稚樹の空間分布特性、齢構成、サイズ分布、生長特性について報告する。

山梨県側富士山5合目森林限界上部(標高2400m)において、0.5haの調査区内に存在する全てのゴヨウマツ稚樹を標識し位置を記録した。同時に稚樹の地際直径、高さ、年齢を測定し、生長量を推定した。

調査区内に存在するゴヨウマツ稚樹は204個体だった。稚樹は単独で生育しているものもあったが、多くは2~12個体が束生していた。稚樹の空間分布をみると、パッチ内に190個体、裸地に14個体と、パッチ内に圧倒的に多かった。パッチ内に稚樹が多い理由としては以下の仮説が考えられる。

1)散布者がパッチ内に選択的に種子を散布している。

2)散布者はパッチ・裸地の区別無く散布するが、パッチ内の方が発芽・定着・生長が良いため。

以上の仮説を検証するために、散布者の行動・生態とゴヨウマツ種子の発芽率・実生の定着率・稚樹の生長速度について現在調査を進めているが、今回はパッチ内と裸地の間でのゴヨウマツ稚樹のサイズ、年齢、生長速度の違いについて報告する。


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