| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-039

竹生島におけるカワウ地上営巣地の特性

*中川潤(滋賀県大・環境),亀田佳代子(琵琶湖博),須藤明子(イーグレットオフィス),野間直彦(滋賀県大)

琵琶湖の竹生島には大規模なカワウコロニーが存在する。カワウコロニーでは、枝葉の折り取りや排泄物の供給により森林が急速に衰退する。カワウの増加により、竹生島はタブノキ林などが深刻な被害を受けている。特に島北部では樹木の枯損が激しく、裸地化した部分が多くみられる。裸地化した場所ではカワウは地上で営巣を行っており、地面や植物が撹乱されることが予想できる。しかし、カワウの地上営巣に関する情報は少ない。そこで本研究では、地上営巣地において植生・土壌調査を行い、地上営巣地特有の性質を明らかにすることを試みた。

島北部に10m四方の調査区を10個、すなわち樹上営巣区A・B・D、中間区J・K、地上営巣区E・F・G・H・Iを設置した。各調査区で毎木調査を行い、樹種・樹高・枯損度などを記録した。さらに調査区内に2m四方の方形区を9つ設け、方形区ごとに下層植生調査(種類・高さ・被度)を行った。また、各調査区で表面土壌の硬度をはかった。さらに土壌のpH・含水比・CN比などを測定した。

地上営巣区での樹木個体数・樹木種数はそれぞれ4~10本,2~6種/0.01haであり、樹上営巣区(17~32本,6~11種/0.01ha)に比べともに少なく、平均樹高(1.2~1.8m<3.6~4.2m)も低かった。枯損度は地上営巣区のほうが高く、枯死個体の割合(25~67%>11~24%)も大きかった。下層植生調査において地上営巣区ではアキノキリンソウ・オオアレチノギク、樹上営巣区ではジャノヒゲ・ベニシダが確認され、ヨウシュヤマゴボウ・イタドリはどちらの区でもみられた。土壌調査では特にpHで地上営巣区と樹上営巣区の違いが顕著であり(それぞれpH:3.83~3.91,pH:3.16~3.34)、地上営巣区では通常カワウコロニーで低いpHが高くなる傾向がみられた。


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