| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-060

乗鞍岳森林限界におけるオオシラビソの樹型形成の過程

*前田久美子(東邦大・理),澤田晴夫(東京大学愛知演習林),丸田恵美子(東邦大・理)

北アルプス南端に位置する乗鞍岳の森林限界移行帯(標高約2500m)はオオシラビソ(Abies mariesii)からなるが、ここでは環境ストレスを受けて樹型が著しく偏形している。乗鞍岳は日本海型気候で冬季の積雪が多く、4月初めの最深積雪は3~4mほどになる。積雪に保護されている3m以下の部位のオオシラビソは順調な成長を行えるが、樹高3m以上に成長すると、冬季の強風や乾燥、強光ストレスなどにより偏形する。そこで本研究ではオオシラビソの樹型を分類し、その形成過程を解明することを目的とする。

20m×20mの調査区内で、オオシラビソの毎木調査(樹型タイプ・樹高・胸高直径・樹齢)を行い、樹型タイプとして実生(樹高1m以下)・稚樹(樹高1~2m)・成木に分類した。さらに成木は積雪面より上の幹の本数と偏形度合いに応じて8タイプに分類した。130本の調査木のうち、実生と稚樹を合わせて約25%を占め、残りの成木のうち樹高2~3mで積雪面以下のものはツリー状であり、樹高3m以上のものはほとんど幹が偏形化していた。成木の約50%弱が主幹1本で風上側に葉のないものであった。残りの成木は、積雪面より上の部分に2~3本の幹が出ていた。胸高直径が大きくなるほど、より複雑な樹型が現れた。

オオシラビソの成長過程では、積雪面の高さに至るまでは偏形化しないが、積雪面より上にでると幹は成長していくのにつれ、やがて環境ストレスの影響が蓄積し、樹齢に伴って幹の葉量が減少し劣化し枯死する。しかしそれを補うように積雪面付近の側芽が上方に成長し、主幹ととって代わって成長するものと思われる。そのため樹型が複雑になると考えられる。


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