| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-180

個体識別の必要ないカメラトラップによるシカ生息密度評価法

*姜兆文(WMO), 山根正伸(神奈川県自然環境保全センター), 今野建志郎(横浜国立大), 山田雄作(WMO)

カメラトラップ法:赤外線センサー自動撮影カメラを使用し、動物が通ると写真が撮られる仕組みであり、観察されるプロセスをモデルにすることで、探知確率による密度推定する方法である(Rowcliffeら2008)。

研究目的:大型動物であるニホンジカ個体数調査手法を確立。

調査地域:丹沢山地にある寄水源林下流部に位置し、面積約529haの扇形地域。

カメラ:Moultrie Game Spy I40、12台。

調査期間:2010年1月18日~2月10日。

モデル式:D=(y/t)(π/vr(2+θ))

[y/tはある時間内に撮影された写真の枚数、vはシカの移動速度(調査地域内でシカに装着したGPS発信器から得られたデータから推定)、rはカメラの探知距離、θはカメラの探知角度、平均集団サイズ(同地域撮影されたシカの平均頭数から推定)]

推定平均密度:21.9頭/km2(1.4~61.0)。

シミュレーション結果:カメラ設置日数を10日固定すると、再現性はカメラの数が20台程度で急激に改善された。カメラの数20台を固定し、設置日数を変化させた場合、再現性は10日間程度で急激に改善された。カメラ設置台日数の合計500台日を固定し、設置地点数を変化させた場合、再現性は、撮影率の分散に強く依存した。以上の結果より、カメラの設置地点は最低でも20箇所設置すべきであり、出来れば40箇所が好ましく、最低でも10日間は設置すべきである。

考察:本研究により推定された生息密度は、区画法と糞粒調査の密度と大きな差が無く、信頼性があると考えられる。今後、継続的に複数の生息密度推定法を同地域で実施することによって、比較的省労力、環境に対する攪乱も小さく、信頼性の高い密度推定法が確立できることを期待する。


日本生態学会