| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-224

ヤマトシロアリにおける有翅虫性比の地理的な変異

*諸岡史哉, 北出理

ヤマトシロアリReticulitermes speratusはミゾガシラシロアリ科に属する真社会性昆虫である。日本に分布するReticulitermes属の他種と比較して、分布域は北海道南部から屋久島・種子島まで広範囲に及ぶ。本種については繁殖構造やコロニー構造について調査が行われている。また、個体群の有翅虫性比が雌に偏ること、茨城県内では個体群内におけるコロニー間の有翅虫性比に大きなばらつきがあることが報告されている。しかしながら、有翅虫性比やワーカー性比について、ヤマトシロアリの分布域を包括的に調査した事例はこれまでに無く、有翅虫及びワーカーの性比のばらつきに地理的な変異が存在するかどうかは不明であった。本研究では、広範囲にわたるヤマトシロアリの分布域内において宮崎県から岩手県にいたる10地点で調査を行い有翅虫性比ならびにワーカー性比を明らかにした。その結果、本種では、ワーカーの性比は地点ごとでばらつきが見られず、ほぼ雌雄比が1:1であった。これに対して、有翅虫性比はコロニー間でのばらつきが非常に大きい地点と雌雄比がほぼ1:1である地点が存在することが示された。特に性比が偏る地点では、雌を専門的に生産するコロニーや雄を多く生産するコロニーの両方が確認された。このような性比の偏りは、遺伝的な要因やコロニーの存在する地点ごとの環境要因の違いによってもたらされるものと考えられる。本発表では有翅虫性比と気温や降水量などとの関連性を中心に考察する。


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