| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-240

北米に移入したエビヤドリムシOrthione griffenisにおける日米個体群の比較

伊谷行*,三好由佳莉(高知大・教),久米洋(愛媛・水セ),John Chapman (HMSC, Oregon State Univ.)

Orthione griffenis Markham, 2004は太平洋東岸に分布するアナジャコ類Upogebia pugettensisの鰓室に寄生する個体に基づいて記載された。本種は、米国の干潟で高い寄生率で宿主に付着するため、U. pugettensis個体群が崩壊しつつある。太平洋東岸では古くより動物相の調査が行われてきたが、アナジャコ類に寄生するエビヤドリムシ類は、腹部寄生者のみが知られており、鰓室寄生者は分布していなかった。つまり、O. griffenisは外来種である可能性が高い。日本産のエビヤドリムシ類の標本を精査したところ、Itani (2004)によってPseudioninae sp. 1とされていたエビヤドリムシ類がO. griffenisであることが判明した。本研究では、日本におけるO. griffenisの分布と寄生状況を報告し、米国産個体群と比較する。

Orthione griffenisは、瀬戸内海、太平洋、東シナ海の計7地点より3種のアナジャコ類に寄生する標本が得られた。瀬戸内海燧灘でナルトアナジャコAustinogebia narutensisを2007〜2009年に月1〜2度の定期採集した結果、全8291個体中O. griffenisの寄生率は0.1%であった。一方、日本で普通種のマドカアナジャコヤドリムシGyge ovalisの寄生率は12.1%であった。米国では大型の宿主個体でO. griffenisの寄生率は50%を越えており、また小型個体が大型の宿主を利用する例が多かったが、日本産の個体群では、小型個体が大型の宿主に寄生する例は見られなかった。米国のU. pugettensisが進化的に鰓室寄生性のエビヤドリムシを排除する戦略を持たなかった可能性がある。


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