| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-243

琵琶湖における外来貝類の分布の現状

*木村妙子,谷口千恵,木村昭一(三重大院・生物資源)

琵琶湖ではオオクチバスやブルーギルなどの外来魚類が,生態系や漁業に大きな影響を与えており,基礎的な生態研究やそれを元にした施策が数多く行われている。一方,滋賀県において生態系に悪影響を及ぼすと考えられている外来淡水貝類として7種が挙げられているが,琵琶湖における詳しい分布状況は明らかではない。本研究は,環境省により特定外来生物と指定されているカワヒバリガイと,要注意外来生物とされているタイワンシジミ種群について,琵琶湖における分布を明らかにし,定量的な評価をすることを目的とした。

調査は2008年から2011年にかけて行われた。カワヒバリガイを中心とした分布調査として,琵琶湖岸と付属湖,島の4地点の53地点を設定し,時間あたりの努力量による定量調査を行った。調査の結果,全調査地点の約半分の28地点で全域的にカワヒバリガイの分布が確認され,富栄養化した付属湖の余呉湖と南湖東岸の調査地点では高密度の生息が確認された。この調査で10地点において,タイワンシジミの生息が確認された。

この調査を元にして,北湖で5地点,南湖で1地点において,タイワンシジミを中心とした定量調査を行った。調査は岸から手網により,一定面積を定量する方法で行った。その結果,すべての地点で形態的にタイワンシジミと判断される個体が確認され,特に南湖の調査地点で高密度分布が確認された。さらにセタシジミ漁場である北湖の東岸の調査地点では,船を使った水深別の調査を行った。調査は貝曳網である目合い1cmのマングワを低速で2分間,水深別に11地点曳網した。調査の結果,水深5m以深にセタシジミが優占し,特に水深5mから7.5mの調査地点では高密度に分布していた。一方,沿岸の調査地点ではタイワンシジミが優占していた。これら2種の分布中心の水深は異なっているが,混在も確認され,種間の競合や遺伝子浸透が懸念される。


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