| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-251

灰塚ウェットランドにおける人工湿地の生態系サービスに関する研究

*小川真莉子(広島大・総科), 中越信和(広島大・院・国際協力), 田中一彦(広島大・院・国際協力), 浜田健一(国土交通省中国地方整備局三次河川国道事務所灰塚ダム管理支所)

全国2892箇所(建設中含む)のダムの中で広面積の人工「ウエットランド」を有するものは、灰塚ダム(広島県三次市・庄原市)だけである。本研究は、その人工湿地である灰塚知和ウエットランドの植生と水質の調査結果である、現在まで蓄積された資料も将来の植生予測を行い、将来の植物及び水質管理・維持方法を検討することを第一義的研究目標とした。

研究内容は、植生調査、植物生息水深調査、植物体中の栄養塩分析、水質調査である。その結果、植物体のリン含有量は、地上部の植物体1g当たりのリン量はクロモが3.6mgで多く、地下部では同量はクロモが5.3mgで多かった。植物体全体ではマコモの81.3mgが最も多く、個体あたりではクサヨシ、イ、マコモ、オギが25mg前後でマコモに続いた。

また、地上部の窒素濃度・個体あたりの窒素量はオギで最も多くそれぞれ2.94%・518.4mgであった。地下部の窒素濃度はイ・マコモ・サクラタデの約1.25mgであった。個体あたりではマコモが379.8mgで最も多いことを認めた。リンと窒素の含有量を植生図の面積に反映させたところ、リン・窒素ともに地上部・地下部でオギがウエットランド全体の4分の3程度の栄養塩を保持していることが明らかになった。これにより、ウエットランドの栄養塩を取り除く方法として、現在優占種であるオギの刈り取り管理が有効であること、 マコモはリンや窒素ともに個体での含有量は多いが現在のウエットランド内に占める割合が少ないため全体で見ると刈り取りによる除去には有効な植物ではないことなどが判明した。しかし、今後マコモが増える環境整備をすることで、ウエットランドの水質浄化機能を高めることができる可能性もあることを示唆したい。


日本生態学会