| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-275

様々な管理手法による竹林の環境経済的評価~兵庫県淡路地域のケーススタディ~

*池野優子(阪大・工), 松井孝典(阪大・工),町村尚(阪大・工),加藤悟(阪大・工)

現在、放置された竹林が社会問題となっている。放置された竹林は時間と共に分布を拡大し、木材生産の妨げになったり、竹の単純植生となって生物多様性の低下をもたらしたりする。しかし竹の成長は早く、バイオマス資源として有用な面もある。よって地域住民が竹林をどうするか(竹林管理アプローチ。今回は駆逐、持続利用、放置)を決めるためには、竹資源の隠れた環境・経済的価値を明確にする必要がある。そこで本研究では地域の竹林管理計画を支援するため、竹林管理の環境竹林管理の環境・経済的評価ツールの開発を行った。このツールは竹林管理アプローチとそれに対応した竹林管理手法(皆伐、輪伐、択伐、筍栽培)、各利用可能竹資源量の推計、竹資源利用オプションの環境・経済の多次元評価で構成される。ここで、竹林には主に、食料、燃料、繊維、木材資源の供給サービスがあるが、本研究では建材、筍栽培、パルプ、ペレット飼料、竹粉(肥料)、炭(肥料・小物)、バイオエタノールを利用オプションとして扱い、①生物多様性影響、②低炭素効果、③経済性、④自給可能性の視点から評価した。低炭素効果は炭素貯留効果とLC-CO2、経済性は粗収入、自給可能性は需給バランスとし、様々な情報源からデータを収集し、ツールを構築した。ツールを用いて竹林単位面積あたりの分析を行った結果、低炭素効果ではバイオエタノール、次いで建材に優位性が、経済性では建材、竹炭に優位性があることが明らかとなった。このツールを用いて兵庫県淡路地域でケーススタディを行い、ツールの実用性を検討すると共に、ヒアリングによって計算過程の検証と結果の妥当性評価、有効性の評価を行った。以上より、どのアプローチ・利用オプションを選択するべきかは一長一短あり、導かれる結果は地域特性にも大きく左右されるが、このツールを活用して竹林管理計画を支援できるということができた。


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