| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-307

最小存続可能個体数と絶滅:格子モデルによる解析

中桐斉之(兵庫県立大・環境人間)

環境の変化などが起こって生物が減少する際、個体数が存続可能個体数以下となると絶滅を引き起こすとされるが、これが、空間パターンの影響を受けるかという観点から、格子モデルを用いて解析を行った。モデルの生物には雌雄の区別のないものとし、二次元の格子モデルを用いて、個体群がどのような空間パターンにあるとき、その後、存続し続けるもしくは絶滅を示すのかを計算機シミュレーションによって解析を行った。本講演では 1種系であるコンタクトプロセスの出生プロセスを発展させた1種系局所相互作用モデルを用いた。具体的には 1つの2次元 の格子を用意し、一定の初期密度で生物を配置し、死亡と出生のプロセスを繰り返した。死亡のプロセスではランダムに1点選び、その点に生物が存在するなら ば一定の確率でその生物が死亡して空き地にする。出生プロセスでは、選んだ1点が空き地の場合、その点に隣接する4点の生物の数に応じて一定の確率で生物が増殖する。この際、4点に存在する生物の数に比例して増殖率を決定することとした。また、これに対して、空間の位置関係に依存せずに増殖が可能な大域相互作用モデルを導入して比較を行った。増殖と死亡のプロセスを繰り返し、シミュレーションを行った結果、両方のモデルにおいて最小生存可能個体密度以下で絶滅するというアリー効果がみられ、その最小存続可能個体密度を求めることができた。しかし、局所相互作用モデルでは、大域相互作用モデルと比べるとより高い密度でも絶滅が起こることがわかった。これは、最小存続可能個体数が空間パターンの影響を受けることを示している。また本モデルでは、局所的には密度が高い状態でも絶滅が起こるという、従来のコンタクトプロセスには見られない新しい結果が得られた。


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