| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-HS12

DNAによるシロサケの近縁関係の調査

松村茉莉子,島田侑果(富山県立砺波高等学校)

富山県は日本海側でシロサケ(Oncorhynchus keta)が大規模遡上するほぼ南限であり、本校理数科では平成19年より、各河川に遡上するシロサケをそれぞれの個体群として捉え、それらの近縁関係を調査している。近縁関係はマイクロサテライト解析により調査したが、当初は大洋を回遊するシロサケの調査にマイクロサテライト解析が有効であるか検証することから始めた。

シロサケの3つのマイクロサテライトマーカーを解析したところ、アリルが非常に多く、個体群内の遺伝子多様性は大きかったが、有意差を判別することができた。これはサケの母川回帰を裏付けているとも言える。

また昨年度からは河川の地理的な距離に注目して調査を行った。その結果、富山県小矢部川個体群と北海道千歳川個体群が、富山県内の他河川個体群よりも比較的近い近縁関係があるなど、河川の地理的な距離と近縁関係に相関が見られない場合もあった。聞き取り調査によると、これにはかつて漁業資源確保の為の商業的移入が行われたことが分かり、その遺伝子が小矢部川個体群内に定着しているとの結論を得た。

近年、遺伝子地域固有性の保護が唱えられている。しかし漁業従事者にとってサケの漁獲量の確保は死活問題である。そこで私たちはそれらの立場の両面から考えた環境保護を提唱していきたい。


日本生態学会