| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


シンポジウム S02-2

砂丘植生を取り巻く危機的状況とその要因

由良 浩(千葉県立中央博物館)

大正時代に砂丘植物を研究した吉井義次は、その論文(1916)に「我國ニテモ亦砂丘少ナシトセズ、・・・・至ル所ノ海岸ニ見ルヲ得ベシ」と書いている。当時日本には、砂丘地帯が数多くあったようである。事実、古い地形図をながめると、現在とは比較にならないほど砂丘や砂浜が広がっていたことが見て取れる。それらの砂丘や砂浜にどの程度植生があったか正確にはわからないが、砂丘植生も現在と比較するとかなりの広がりがあったものと推測される。

では、これらの砂丘地帯はどのようにして縮小したのであろうか。本州、四国、九州の428箇所の砂浜の奥行き(砂浜の汀線から内陸側の境界までの距離)の変化を、1952年頃の地形図と1993年頃の地形図とを比較して約40年間の変化を調べた。その結果、確かに砂浜の平均的な奥行きは約73%も 減少していた。ただし海からの浸食により狭まった例は少なく、ほとんどの場合、陸側から松林の造成や開発等により砂浜が狭められていることが認められた。

砂浜はさほど浸食されていないような結果になったが、むしろ護岸が進んだために浸食が止まっているとみたほうがいいようである。現在の日本では、堤防等がない砂浜のほうが珍しい。堅牢な堤防があまりに汀線近くに構築されると砂浜はほとんど消失する。堤防が汀線から離れた内陸側に構築されていても、砂浜の奥行きが狭いと、生育する植物は限られてしまう。

砂浜や砂丘そのものの減少の他にも砂丘植生に影響を与えている要因がある。車や人の侵入と踏みつけ、外来種の侵入、ゴミなどである。車が頻繁に通ると植生は消え、裸地化するだけでなく砂丘自体も破壊されてしまう場合がある。外来植物の侵入も日本中のいたるところの海岸で見られる。自然に侵入した種だけでなく、飛砂防止のために大量に植栽されたオオハマガヤのような外来種もある。


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