| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


企画集会 T04-2

外来生物防除のための時空間的な意思決定支援ツール~アカギとマングースを例に~

*深澤圭太(自然環境研究センター), 阿部愼太郎(環境省那覇自然環境事務所), 小池文人(横浜国立大学), 田中信行(森林総合研究所), 大津佳代(日本森林技術協会)

外来生物の個体群は、増殖・分布拡大と人為的な防除によって大きな時空間変動をみせる。外来生物のパターン動態と防除戦略には密接な関係があるが、そこには時空間構造を持つデータ解析の困難さに加え、密度抑制に伴う情報不足という壁が立ちはだかり、データに基づく意思決定を困難にしていた。本講演においては、それを打開するための方法論を紹介する。

①不均一な景観における分布拡大パターン⇒外来生物防除の空間的優先順位

外来生物の分布拡大を散布と定着という2段階のプロセスとして記述する統計モデルを構築し、小笠原諸島母島のアカギを対象に分布拡大パターンからそれぞれのプロセスを同時推定した。その結果、アカギの分布拡大速度や潜在的なハビタットが明らかになり、分布拡大の抑制や在来植物への影響緩和のための空間的な管理の優先順位を判定することが可能となった。

②導入履歴と捕獲の時空間分布⇒防除の効果と根絶確認に必要な年数

導入履歴・捕獲データと個体群動態を関連付ける階層ベイズモデルを構築し、奄美大島のマングースの個体群サイズ動態と防除の効果を同時に推定した。さらに、ベイズの定理を用いて捕獲率から根絶確認に必要な年数の見積りを行った。

③複数種パターン動態⇒防除による外来捕食者インパクト軽減の評価

マングースおよび在来ネズミ2種・外来種クマネズミのパターン動態から、マングースの捕食インパクトを多種系に拡張した状態空間モデルにより明らかにした。在来ネズミの増加率はマングースの影響を強く受けていたが、現在の低下したマングース密度のもとでは島のほぼ全域で増加可能であった。また、クマネズミはマングースの影響をほとんど受けておらず、Mesopredator releaseの脅威は小さいことが明らかとなった。


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