| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


企画集会 T06-5

ユネスコ・エコパーク新規登録に向けての現状と課題

酒井暁子(横国大・環境情報)

日本MAB計画委員会は新規登録に向けての活動支援を行っているが、日本では1980年以来新規登録が途絶えており、当時とはMABのコンセプトも変化しているので、新しい制度を構築するに等しく、手探り状態が続いている。

エコパーク制度は管理運営に具体的な規定がほとんどない。日本では発展途上国のように原生的自然自体に依存した生活はほぼ無いので、シンボルとしての原生的自然を核心地域として中心に置き、環境保全型の一次産業と三次産業を周辺の移行地域で行い、そうした経済的なインセンチブの元に野生生物の生息地の保護管理を行うとのスタイルが一般的になりそうである。そこで主体となるのは地方自治体となる。

登録を目指す地域からは、都市化が進まなかったからこそ残された自然と伝統文化を活かした地域づくりのスキームとして役立つことが期待されている。地域の理念や将来ビジョンを策定し世界にアピールする機会となるだろう。

他の自然保護制度と異なり、広汎な組織的対応が必要となり、1)動植物や伝統文化の専門家からなる学術チーム、2)自治体の政策課や自然環境部局、環境省などの出先機関や森林管理局など国、県レベルの担当官からなる行政チーム、3)自然保護活動団体、自然産業業界団体などの市民チームが有機的に連携する体制作りが必要である。リーダーにはコミュニケーション能力に優れ、リーダーシップと調整能力を発揮できる人が望ましいだろう。

MABはそれ自体は法的拘束力を持たないが、核心地域は法的に保護されていることが必要で、緩衝地域も実質的には法的な規制が必要となることから、現実的には国立公園や森林生態保護地域など国内の自然保護制度を利用することになる。そこで関連行政組織とりわけ環境省、林野庁とはコンセンサスを持つ事が重要である。


日本生態学会