| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


企画集会 T08-2

琵琶湖水系における外来魚類の現状と課題

中井克樹(滋賀県立琵琶湖博物館)

琵琶湖とその集水域にはおよそ15種の外来魚種が定着しており、そのうち「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」(外来生物法)の特定外来生物に4種が、また「ふるさと滋賀の野生動植物との共生に関する条例」(野生動植物共生条例)の指定外来種に2種が指定されている。

1960年ごろに侵入したタイリクバラタナゴ(指定外来種)は、在来のニッポンバラタナゴと交雑しこれを絶滅に至らしめた。現在、指定外来種は大手のホームセンターが取り扱いを停止し、流通が抑制されている。

ブルーギルとオオクチバス(ともに特定外来生物)は、それぞれ1960年代、70年代に相次ぎ侵入、湖の沿岸域で激増し、深刻な生態的影響が懸念された。1984年から始まった駆除事業は1999年から強化され、2003年には釣った魚のリリースを禁ずる「滋賀県琵琶湖のレジャー利用の適正化に関する条例」(琵琶湖レジャー条例)が施行され、釣り人からの回収ルートが加わった。オオクチバスとブルーギルの年間回収量は400t程度で推移し、両種の湖内での推定現存量は駆除事業を強化した当初(計3000t)から半減(1400t)したが、事業の持続性の確保が今後の課題である。

これら湖内に生息する外来魚種に加えて、湖の集水域で確認されている外来魚種のなかにも、生態的影響が危惧されるものがある。

コクチバス(特定外来生物)は3箇所のダム貯水池での定着が確認され、流出河川を通じて琵琶湖への大規模な侵入・定着が憂慮される状況にある。また環境省の絶滅危惧Ⅱ類で京都府以西に自然分布するオヤニラミ(指定外来種)は、県内3箇所の河川中流域に定着している。特に滋賀県の場合、生息地から琵琶湖へ流下した個体が湖内で定着した場合、本種の生息しない環境下で進化した固有種に対する侵略的影響が懸念される。


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