| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


企画集会 T15-3

外来植物の最適管理戦略:駆除にどれだけ投資すれば良いのか?

横溝裕行(国立環境研究所)

現在、様々な侵略的外来種が原因で、在来種の種数や個体数が減少したり、農業被害が発生している。侵略的外来種の駆除のための予算は限られているために、侵略的外来種による被害を効率的に軽減できる管理戦略を構築することは重要である。また、侵略的外来種の生存率などの確率性や、様々な不確実性に対処せねばならない。本講演では、農業などに被害をもたらしている外来植物の最適管理努力量を求めるための理論的研究を紹介する。

最適な管理努力量を求めるためには、外来植物の密度によってどのくらい経済的被害があるのかを知る必要がある。外来植物の密度と経済的被害の関係は正比例するとは限らない。例えば、Wild radish (Raphanus raphanistrum)は、種子が穀物に混入する事によって輸出が禁止されたりするために、低密度でも経済的被害は甚大となる。一方、Paterson’s curse (Echium plantagineum)は、家畜にとって毒性があるが、低密度の場合は利用しないので影響がほとんどなく、高密度の場合のみ経済的被害が大きくなる。しかし、外来植物の最適管理努力量を求める理論的研究のほとんどは、外来植物の密度と農業や生物多様性に与える負の経済的影響の関係が明示的に考慮されてこなかった。

本研究では、外来植物の密度を減少させるがコストを伴う管理努力量の最適値を導出し、外来植物の密度と経済的影響の関係が最適な管理努力量にどう影響を与えるのかを明らかにした。また、この外来植物の密度と経済的影響の関係を誤って適用することによってもたらされるコストを計算することによって、この関係を調査・研究することの重要性を情報の価値として定量化した。


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