| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


企画集会 T16-5

外来魚類対策からみるモデル事業と要注意外来生物

中井克樹(琵琶湖博物館)

2005年6月の「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」(外来生物法)の施行に際し、オオクチバスは、この法律で規制することの是非が大きく注目されたが、紆余曲折を経てブルーギル、コクチバスとともに規制対象である特定外来生物に指定された。

法律施行年度の後半から、これらの魚種を対象にその効果的な生息抑制を図るべく「オオクチバス等防除モデル事業」が始まった。事業水域としては、伊豆沼・内沼、片野鴨池、琵琶湖(以上、ラムサール条約登録湿地)、羽田沼、犬山市のため池群、藺牟田池(以上、希少種の生息地)の6箇所が選定された。当初、実施期間は2008年度末までとされていたが、2011年1月現在、3箇所で事業が継承されている。

これらのモデル事業については、対象魚種の抑制状況や保全対象の回復状況の把握が不十分であること、優占するブルーギルに適した抑制手法の開発が不十分であること、実施水域が止水環境に限られていること、実施水域間での情報の共有や連携がほとんど図られていないこと、などが今後の課題として挙げられよう。

また、法律の施行と合わせて、環境省は「要注意外来生物」を選定しウェブサイトでリスト化し、これらの解説を行っている。しかし、このリストの内容は設置当初のままで、注意を喚起すべき外来生物でありながら含まれていないものもあり、定期的な点検が不可欠である。要注意外来生物リストは、特定外来生物選定のための基盤としてだけでなく、その啓発的役割にも期待して、法律の枠組みにとらわれず柔軟に随時、整備することが需要であると、演者は考える。そのために参考とすべきは絶滅危惧種対策である。そこでは、定期的に整備されるレッドリストが種の保存法の対象種の指定のためだけでなく、生物多様性の保全の諸目的のためにも有効利用されている。


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