| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


企画集会 T24-1

風力発電施設が鳥類に与える影響(概論)

浦 達也(日本野鳥の会・自然保護室)

(1)影響の種類

・生息地の喪失:風車の建設地が繁殖や採餌場所として利用できなくなる。

・移動の障壁:渡りルート、巣と餌場間等の移動ルート上に風車が並ぶと、鳥が風車を避けてしまい、利用できなくなる。

・衝突(バードストライク):風車の羽や支柱に鳥が衝突する。衝突のリスクは鳥の年齢や習性、翼に対する体の大きさのほか、視界不良や上昇気流の不足など気象条件によっても違う。

(2)影響の出やすい地形と影響の種類

・渡りの通り道や出入り口となる岬や半島部、峠など:移動の障壁、衝突

・尾根や谷:生息地の喪失、障壁、衝突

・海崖の上:衝突

・平地や台地:障壁

・餌場となる田畑、水路、海岸線など:生息地の喪失、衝突

(3)影響の出やすい風車の設置パターン

・風車列の端

・急斜面、峡谷、尾根上の風車

・1基だけ独立した風車

・間隔の広い風車

・餌資源の豊富な場所にある風車

・止まり木や避難場所が近くにある風車

・支柱が高く、ローターが大きく、速度がゆっくりしているほど危険

(4)モーションスミア現象:室内実験により証明された、猛禽類は回転している風車のブレードから約10m以内に近付くと見えなくなり、風車の存在を認識できなくなるという現象。このことから、猛禽類で衝突事故が多いと考えられている。

(5)採餌行動との関係:猛禽類は下を向きながら集中して餌を探すが、その際に風車の存在に気付くのが遅れる、または急降下時に風車が目に入らなくなると考えられる。また、モーションスミア現象との組合せも考えられる。

(6)環境変化との関係:風車設置に伴う土地改変により周辺部が裸地、牧草地や草地になるなど、土地利用や環境が変化した場合、ノウサギやネズミ類などが増え、そこを新たに餌場として利用する猛禽類が増えることがある。採餌行動を多く行なう場所に風車があると、衝突の危険性が高まる。


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