| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) C2-17 (Oral presentation)

所属コロニーを判定した採餌マルハナバチの訪花からのコロニーによる餌利用の推定

*永光輝義(森林総研), 筑波沙彩, 後北芙実, 紺野康夫(帯広畜産大)

マルハナバチは、農地景観で野生植物だけでなく農作物を訪花し送粉サービスを提供する。マルハナバチの巣は野外で発見しにくいため、多数のコロニーの訪花植物を知ることは難しい。そこで、訪花ワーカーの所属コロニーを判定し、コロニー間で訪花植物の比較を試みた。

マルハナバチが訪花する農作物としてカボチャが栽培されている6 km2の調査地で、野生または栽培植物を訪花したエゾトラマルハナバチ(トラマル)とエゾオオマルハナバチ(オオマル)のワーカーを採取し、マイクロサテライト遺伝子型から推定した全姉妹を所属コロニーが同じワーカーと判定した。コロニーあたりワーカー数を切れた(ワーカー数0を欠く)負の二項分布に当てはめて、トラマル108コロニーとオオマル400コロニーを推定した。同時に、調査地の林に設置したウインドウトラップでトラマル15ワーカーとオオマル96ワーカーが捕獲され、推定コロニー数と同様の傾向を示した。

コロニーの大きさおよび採餌範囲と期間が訪花植物の組成と関連するかを、複数のワーカーが採取されたトラマル32コロニーとオオマル41コロニーで検討した。コロニーごとの採取ワーカーにおける野生植物と栽培カボチャへの訪花比率を、コロニーあたり採取ワーカー数と採取位置間の平均距離と採取日間の平均差およびランダムなコロニー間差で説明した。その結果、栽培カボチャへの訪花比率はコロニー間差が大きく、採取ワーカー数が多いオオマルコロニーは野生植物への訪花比率が高かった。よって、栽培カボチャへの訪花は、農地への距離のばらつきのためコロニー間差が大きく、カボチャの開花期がコロニー活動の後期のためコロニーの成長には寄与しなかったと解釈できる。しかし、コロニーあたり採取ワーカー数が少ない(2-13)ことや、採取したワーカーからコロニーの属性を推測できるか疑わしく、この方法には改良の余地がある。


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